私は自然素材が好きである。
「衣」はダウンコートやレインシューズなど機能優先のもの以外は、なるべく天然素材のものを、
「食」はできる限り加工されていない、そのままの素材を買うようにしている。
手間がかかるのでは、と思われるかもしれないが、意外とそうでもない。
「衣」については、もともとファッションが好きであれこれ試したくなる性分なので、「天然素材」という縛りが買いすぎへのブレーキになってくれる。
洗濯に関しては、なんでも家で洗いたい私にとっては、綿やウール、リネンのほうが扱いが分かりやすく、安心して手入れができる。
「食」に関しては、献立も味付けもある程度パターンができているので、旬の素材を優先的に使えば、無理なく回っていく。手の込んだものはプロの味を楽しみたい派で、家で難しい料理はしないので、そのための道具や調味料は必要ない。
なぜ自然素材が好きなのかと問われると…。
心地よいから。そして案外無理なく扱え、長く使い続けられるからだ。
同じように、住まいもなるべく自然素材でつくることをおすすめしたい。

自然素材の住まいを設計する一方で、私自身は合板やビニールクロスでできた家にも住んできた。自然素材の空間に入ったときの、体がふっと緩むような感覚にはやはり心地よいものがあると感じる。
無垢のフローリングを見て、「傷がついたらどうなるの?」と気にされることがよくある。合板のフローリングは、傷がつきにくいコーティングや表面材を特徴としているものも多い。そのイメージでのご質問だと思うが、無垢材はそれとは少し違う感覚で捉える素材だ。
無垢材は、生活していれば全体にまんべんなく傷がつき、色が変わり、表面のつやも変化していく。これが経年変化というものだが、自然素材においては単なる劣化というよりも、味わいとして受け止めることができる。一方で、合板フローリングは仕上げによっては傷が目立つこともあり、補修の考え方も異なる。
お手入れについても同様だ。世に出回るお手入れ材には新建材向けのものも多いが、自然素材の場合は、湿気や風通しといった基本的な環境に気を配ることで、比較的シンプルに維持できることが多い。
考えてみてほしい。
現在主流となっている合板やサイディング材が日本の住宅に広く普及したのは戦後のことだ。100年後にどうなっているかは誰にも分からない。
一方、伝統的な日本の住まいの多くは、木などの自然素材でつくられてきた。もちろんメンテナンスを前提としてではあるが、長い時間をかけて使われ続けてきた例も少なくない。だから私たちはその性質や扱い方を、経験的にもよく知っている。
扱いやすく、心地よく、長く付き合っていける。そうした感覚は、私たちの暮らしの中にすでに根付いているように思う。