古い長屋を3世代5人で住むために改修した。私は主にキッチン周りの計画を担当した。
限られたスペースの中でそれぞれが快適に生活でき、また家族のコミュニケーションが生まれるキッチンとダイニングを目指した。
コーポラティブハウスなど、住人同士の交流を大切にした住まいでは、LDKが交流の場として位置づけられることも多い。
食べるという行為は誰にでも共通のことなので、共有しやすく、きっかけにしやすいということなのだろう。
この家でもテーブルと一体化したキッチンを畳の間とつなげ、キッチンを中心とした空間を共有しつつ、それぞれが使いやすく、居心地よく過ごせるように考えた。

さて、3世代で住むというのはどんな感じなのだろう。
私自身は核家族で育ったので、祖父母のいる日々というものがどんなものなのか、あまりピンとこない。
近所の友達には、おばあちゃんが同居している子がいて、遊びに行くとおかきをつくってくれて、それがとてもおいしかったのを覚えている。
その後、長じて祖母の家に一時期同居したことがあるのだけれど、それは祖母を一人の人間として理解するのにとても良い経験ではあった。
そんな私が親になり、今また核家族で暮らしていて感じるのは、子供にとって祖父母と暮らす体験は、貴重なものになるだろう、ということだ。
うまくいけば、祖父母や子供の親にとっても、別々で暮らすより、お互いに得るものがあるのかもしれない。
しかし、そうは言っても簡単にはいかないのが3世代同居。
生活リズムも価値観も違う人たちが同じ屋根の下で暮らすのだから、どの立場であれ大変なことだ。
それでも、もし3世代同居を始めるとしたら、建築が物理的な面からお手伝いできると思う。
でも建築は、人間関係をよくする魔法ではない。
できるのは、家事をスムーズにできる空間をつくること。言葉を交わすきっかけや、食事の時間がバラバラでも同じ時間を共有できる場、一人でいられる時間。そういう暮らしを空間を通して後押しすること。
関係は、人と人が育てていくもの。
建築にできるのは、その土台をつくることなのだと思う。