個から広がる可能性——高齢者向け共生型集住体の事例から

「私」は心地よく日々をすごしたい。

そのためにはひとりでいられる時間と空間も必要だ。

そんなときは「私」の場所を閉じてしまおう。

でも人恋しくなるときもある。

そんなときは外に出てみよう。

誰かがいると、ひとりの時とは違った喜びが生まれるから。

あっちにも行ってみよう。

きっとそこにも誰かがいる。

だけどもう少し近づきたいときもある。

そんな時は「私」の場所を開いてみよう。

「私」から開いて、「あなた」を招き入れよう。

学生の頃から、「個」を住まいのベースに置くという考え方に影響を受けてきた。
これは学生時代のプロジェクトだが、この問いに対して私なりの答えが一旦出た案として、今も私の思考のベースにあると感じる。
個人を基準としながら、周囲と無理なく関係を築く空間とはどういうものか。
「高齢者向け共生型集住体」という題材は、その問いを考えるのに、とても適していたと思う。

高齢者のための集住体。
このテーマの前に、まず何人かが集まって住むならば、
どんな空間で、どんなふうに隣人と関わりあいながら暮らしたいか、
ということを考えていた。

そこで望んだのは、個人のスペースを完全に確保しながらも、
どこかで他人とつながっていられることである。
たとえどんなに親しい人物と住んでいても、一人になりたいときはあるし、
また、そんな時があっても、一方で他人とのコミュニケーションを求めている自分がいるからである。

この、相反する気持ちを両方かなえる集住の仕方を提案する。

1999年11月